研究の背景

HMG-CoA還元酵素阻害薬(以下、スタチン)は高コレステロール血症治療薬として、日本においても動脈硬化性疾患予防ガイドラインにその使用が定められており、糖尿病を合併した患者のLDL-C管理目標値は120 mg/dL未満とされている。一方、海外においてはNCEP ATPIII (National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III) において冠動脈疾患と糖尿病を有する患者はVery high-risk群として、LDL-C管理目標値を日本人における二次予防目標値100 mg/dLを更に下回る70 mg/dL未満にすることが提案され、更に、2008年発表されたADA/ACC(The American Diabetes Association and the American College of Cardiology Foundation)のConsensus statementでは、冠動脈疾患リスクを有する糖尿病患者をHighest-risk 群と位置づけ、LDL-C管理目標値を70 mg/dL未満に設定している。

国内の糖尿病合併高コレステロール血症患者は平成14年の糖尿病患者740万人のうち、約1/4と言われている。JDCS (Japan Diabetes Complications Study) の結果から、糖尿病患者の大血管合併症はHbA1c値の次にTG、虚血性心疾患ではLDL-Cが有意なリスクファクターであり、糖尿病合併高コレステロール血症患者において積極的な脂質改善治療を行うことの有用性は確立している。 一方、糖尿病網膜症を有する患者では、心血管疾患リスクが更に増大するとの報告があるが、LDL-C低下療法による心血管疾患発症抑制を評価した成績はなく、LDL-Cの管理目標値も明らかになっていない。

そこで今回、冠動脈疾患の既往のない糖尿病網膜症合併高コレステロール血症患者を対象とし、スタチン単独治療による一次予防に適切なLDL-C目標値の設定を目的とした比較研究を、多施設共同、オープンラベル、ランダム化並行群間比較法により実施する。